私たちが暮らしていく上で水は欠かすことはできません.水は,飲み水,農業用水,工業用水などに不可欠な重要な天然資源の一つです.人間だけでなく,植物や動物なども水に大きく依存しています.その一方で,水によって豪雨や津波などの災害も多く起きています.
水工学研究室では,私たちの生活をより豊かにまた安全にするために,どう水を管理していくべきかを研究しています.水の物理的な性質を中心として,水質・環境・地形形成などの要素を考慮しながら私たちの生活する街・地域の中で水・物質の循環をどう調整していくかを研究しています.
Hydraulics is an engineering field based on fluid mechanics and investigates open channel flows, sediment transports, bank erosion protection, hydraulic structures design, and ecology related to water flows. We frequently survey natural rivers to clarify the interrelated processes among flow, sediment, aquatic vegetation and ecosystem, which are also studied by physical modeling and computational modeling. Studies on flooding and prediction of localized heavy rain fall are also pursued. Good water management is one of the crucial factors to create sustainable societies.
1.降雨 雨がどう降るか,どう予測していくか,その予測を防災や水利用の計画にどう活用するかを研究しています.
2.流下 降った雨は川に集まって流れていきます.土砂や栄養などの物質も水が下流へと運んでいきます.このような実態を分析し,また河川管理を通して物質の輸送能力の調整を図っていきます.
3.河道管理 水の流れによって土砂が運ばれると,川の形が変化していきます.河道の地形変化に合わせて植物や魚などの生息場が変化していきます.河川環境を保ちながら洪水氾濫などを防ぐ持続的な河川管理の方法を研究しています.
4.洪水氾濫 川から水があふれたり,特定の場所でたくさんの雨が集中すると,私たちの生活の場に水が氾濫してしまいます.このような災害をどう防ぐか,被害の規模をいかに小さくしていくかを検討しています.
1. Rainfall Quantitative estimation of rainfall based on radar observation, fore- and now-casting of extreme weather events and early disaster warning are great research challenges for minimizing rain water hazards.
2. Runoff Heavy rainfall generates surface runoff flow carrying sediment and nutrients. Research on flood flow with sediment contributes to protection of river works. It also provides the information on ecosystem restoration in mountainous streams.
3. River management River morphology and vegetation along the water course have significant impact on flood flow and water ecosystem. Proper river management is required for flood hazard reduction, water utilization and providing good habitat for ecosystem.
4. Inundation control Both the overbank flow and insufficient drainage capacity cause inundation in urbanized areas. The information of potential inundation and the measures to minimize the inundation damage is crucial for human safety and socio-economic activities.
水は,地球上のさまざまな生命の源であるとともに,人間活動を支えるかけがえのない物質です。この水は,雨や雪となって地上に降り,一部は蒸発散により大気に戻りますが,それ以外は地表や地中を流れ,川を流下してやがて海に流れ出します。また,水の流れとともに,様々な物質が移動し,生態系を維持しています。
川の上流から河口まで,すなわち流域全体において,水循環や物質循環を良好な状態に保全し,無理のない持続可能な住み方や生態系の保全方法を考えていくことがますます重要となっています。しかも,今後,気候変動に伴って降水も大きく変動し洪水や渇水が激化することも予測されています。
このような状況にあって,本研究室では,流域の持続可能な発展を支える技術開発,とりわけ,水の量や質の保全や流れの制御に関する技術の開発を行っています。
流れの中に置かれた物体には流体力が作用し,流れはその反作用を受ける.海岸沿いの松林群や河川沿いの水害防備林は樹木群を積極的に利用する例であるが,河道内に繁茂する樹木群は洪水の疎通能力を低下させる.しかし,樹木群の管理に必要な情報が不足している.本研究では,水路内に樹木群の模型として正方形断面の角柱列を並べ,個別の角柱に作用する流体力と前方の角柱による遮蔽効果を直接計測する.特に,角柱群の配列を系統的に変化させて計測を行う.
日本の河川は中下流域で複断面形状を有し,低水路と高水敷の境界部に植生を有することが多い.この植生は洪水時に流れの抵抗となるため,その管理は極めて重要である.本研究では,低水路側岸に樹木群を有する複断面湾曲水路に対して,低水路満杯流量が流れる場合とさらに大規模な洪水が発生した場合について,流速や水深分布を計測し,流れの特徴を整理する.なお,得られた結果は3次元数値シミュレーションの検証用データとする.
河床変動を伴う洪水流の特性を詳細に検討するためには,模型実験を行うが,適切な河床材料を選択しないと実際とは異なった河床形態が発生してしまう.本研究では,軽量かつ粒径の大きな人工的な材料を敷き詰め,低水路に安定な河床形態として小規模河床形態でなく単列砂州が形成される条件を整理する.まず,低水路満杯流量で安定な交互砂州の形状と流速分布を計測する.その後,さらに流量を大きくし,高水敷上の流れが河床形状と流速分布に及ぼす影響を明らかにする.
豪雨災害の軽減のために,国土交通省は,広島市の東西に設置されたXバンドMPレーダを設置し,得られた高分解能の雨量情報を発信している.本研究では,XバンドMPレーダが計測したオリジナルなデータから,風速分布と雨量分布等の公表されていない情報を算出し,3次元的な可視画像を作成するプログラムを開発する.また,その情報を活用して,豪雨をもたらした降水システムの特徴を理解するとともに短時間降雨予測への応用を検討する.
河川の中には,水草が生えており,小魚や昆虫の生息場など河川環境・生態系上の重要な機能を果たしている.水草自体は柔らかであるが,常時,水の流れという大きな抵抗力が作用している中でも水草は生息域を三次元的に拡大している.また普段より大幅に大きな抵抗力が作用する洪水時にも根元付近が残存して,洪水後に再び繁茂域を広げることもある.本テーマでは,現地観測と室内実験を行って,水草が流水抵抗のある環境中でどのように群落を拡大しているかや,洪水によりどのように流出・残存するかを分析する.
洪水氾濫や,津波の来襲などが起きると,大量の水・土砂・流木等が宅地や農地などに流れ込み,大きな被害を引き起こす.我々が生活する土地を氾濫流がどのように流れるのか,堤防・農地・道路などの洗掘・流出などの被害の発生機構や条件を,被災事例の調査や模型実験を行い調査する.氾濫流のミクロ・マクロな流れ方の特徴を踏まえて,高精度かつ効率的に予測する方法を開発し,地域づくりにより氾濫流を制御しながら生活や産業活動を支える方策の立案に活かす.
Impacts of climate change on water resources of the Gonokawa River 江の川の水資源に対する気候変動の影響
General circulation model (GCM) is a very important tool in assessing climate change and in helping decision making to cope with changing climate. But they have a large uncertainty for basin scale impact study due to large scale simulation in global scale. To overcome this difficulties, statistical bias correction can apply to remove bias of GCM during the past century by comparing with ground stations in the basin scale and then predicted for future climate. Then hydrological model is simulated by using high resolution digital elevation model (DEM), land use, soil type and other meteorological parameters. The model needs to validate with station gauge stream flow to assure its performance. Moreover, climate change future prediction information are used in the hydrological model to predict the availability of water resources in the analyzed river basin in near future.